文書の真正性を確保するために必要な3つの方法を解説
企業は事業運営を行うために、さまざまな組織や人と文書を取り交わします。その代表例として挙げられるのが契約書です。例えば、会社を運営するためには事務所などを確保する必要があるため、売買契約書や賃貸借契約書を取り交わします。また、従業員を雇う際は雇用契約書、外部に仕事を依頼するときは請負契約書や秘密保持契約書などにサインするケースが多いです。
このように、企業は数多くの文書を取り交わし、事業運営を行いますが、それぞれの文書に関してそれが本物なのかどうか企業は証明する必要が出てくる場面もあります。つまり、万が一のときなどに備えて文書の真正性を確保しなければなりません。しかし、どのように文書の真正性を確保すればいいのかわからない方もいるのではないでしょうか?
そこで、今回は文書の真正性の概要やそれを確保しないことで起こるトラブル、真正性を確保するための具体的な方法について解説します。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
目次
文書の真正性とは?
文書の真正性とは、企業が取り交わした契約書などが改ざん等を受けることなく、責任の所在が客観的に証明されている文書のことです。厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインP.76によれば、『真正性とは正当な権限において作成された記録に対して書き換えや虚偽入力、消去及び混合等が防止されており、尚且つ第三者がその文書を確認して客観的に責任の所在がわかるもの』と記載されています。
契約書は文書の真正性を確保していない場合、契約トラブルに発展する可能性があります。実際に民事訴訟法第228条では、文書は成立したことが真正であることを証明しなければならないと定められています。また、文書だけでなく、電子契約書に関しても電子署名法によって真正性を確保するためには本人による電子著名が必要であると定められており、企業はあらゆる文書に対して文書の真正性を確保することが求められるでしょう。
参照:厚生労働省『医療情報システムの安全管理に関するガイドラインPDF P.76』
文書の真正性を確保しないことで起こるトラブル
文書の真正性を確保しないと企業はどのようなリスクを背負うことになるのでしょうか?具体的に起こり得るトラブルについて詳しく解説します。
データ改ざん
1つ目のトラブルは、データ改ざんです。
文書の真正性が確保されていない文書は、それが本物の文書であることを証明することができません。そのため、文書をデータ改ざんし、あたかもその文書が本物であるかのうように提示することは簡単にできてしまいます。
契約書の偽造は私文書偽造罪、すでにある文書の改ざんを行う行為は私文書変造罪にあたるため、処罰の対象です。しかし、後述する通り、文書の真正性をそもそも確保できないと偽造されたり、データ改ざんされたりしたのかどうかも証明することができないため、企業のリスク管理として好ましいとはいえません。
法的に証明ができない
2つ目は、法的にその文書が本物かどうか証明できないことです。
法的に証明することができない場合、万が一訴訟等が発生したときに、不利に働く可能性があります。例えば、本物の契約書であるのにもかかわらずその真正性を証明することができないと、契約書が偽造・改ざんされたとしても立証することが困難になってしまうのです。
実際に、裁判では偽造証拠が提出されるケースは珍しくありません。偽造を見抜くためには、弁護士が徹底的に調査する必要がありますが、真正性が確保されておらず、偽造された証拠が見つからない場合、相手が提出した契約書が偽造されていると判断してもらうことが難しくなります。そのため、法的な証明を行えるようにしておくためにも文書の真正性を確保することが重要です。
不正行為の隠蔽
3つ目は、不正行為の隠蔽です。
文書の真正性を確保できない場合、“この文書が本物である”ということを客観的に証明することができないため、データ改ざんが容易にできてしまいます。そのため、自分の不正行為を隠すために、資料データを改変することで、隠蔽することができてしまうというわけです。
当然、文書の真正性が確保されていない場合、不正行為が起こったとしてもそれを証明することが難しくなります。これにより、企業は大きなリスクを抱えることになるでしょう。
企業の信頼性の低下
4つ目は、企業の信頼性の低下です。
文書の真正性を確保していない場合、法的な証明が難しく、データ改ざんなどの危険性があるため、その企業の信頼性は大きく低下します。結果的に、企業の経営にも悪影響をもたらすため、文書の真正性の確保を行っていない企業は、早急に対応することが求められるでしょう。
文書の真正性を確保するための4つの方法
文書の真正性を確保するためには、大まかにわけて4つの方法があります。それぞれの方法について具体的に解説しますので、文書の真正性を確保したい企業は、ぜひ参考にしてください。
ハッシュ値での比較
1つ目の方法は、2つの文書に記録されているハッシュ値を活用することです。
ハッシュ値とは、元のデータから特定のアルゴリズムによって生成される数値・アルファベットを組み合わせた文字列のことです。ハッシュ値はファイル内で保存された情報が反映されているため、ファイルの内容が変更されている場合、当然ハッシュ値も大きく変化します。そのため、ファイルが変更されていないことを証明するために、ハッシュ値を活用することができるというわけです。
例えば、ハッシュ値は下記のように表現されます。
【ハッシュ値の例】
契約書A:9579HKLNVLS97JGERGFMBVC945749423
契約書B:83265HTYI76586JGIOGYT658873HBIJ765
電子契約書など電子データのみ有効となりますが、文書の真正性を確保するための方法として有効です。
電子署名
2つ目の方法は、電子署名です。
電子署名とは、電子文書が本人によって作成されたことを証明することができる技術を意味します。前述のハッシュ値を活用し、送信者と受信者のハッシュ値を比較することで、その電子文書が本物かどうかを確認することが可能です。
タイムスタンプ
3つ目は、タイムスタンプです。
タイムスタンプとは、ある時刻における電子データの存在やそれ以降に改ざんされていないことを証明する技術を意味します。タイムスタンプもハッシュ値を比較して文書の真正性の確保を行っています。
署名の時刻を確認することができるだけでなく、電子署名が失効していないかどうかもチェックすることが可能です。
アプリケーション・サービスによるアクセス制限
4つ目は、アプリケーション・サービスによるアクセス制限です。
アプリケーションやサービスのアクセス制限を利用することで、企業は文書にアクセスすることができるユーザーを制限することができます。これにより、不正なユーザーや悪意のある第三者が文書にアクセスすることを抑制することができるので、改ざんのリスクを大幅に減らすことが可能です。
また、アプリケーションやサービスの追跡機能を利用することで、不正アクセスや改ざんが発生した際にユーザーを特定しやすくなります。
まとめ
今回は、文書の真正性を確保するための具体的な方法について詳しく解説しました。企業が契約書などの文書の真正性を確保することができない場合、データ改ざんなどのリスクを背負うことになります。そのため、対策が不十分と思われる企業は、早急に文書の真正性を確保するための取り組みを実行する必要があるでしょう。
文書を電子化することで、ハッシュ値で比較し真正性を確保することが可能になります。そのため、文書の電子化を検討されている企業も多いのではないでしょうか?
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